悔いなき筆振り
先駆条約の新依頼を受けに行っていたところに、弁論の始まりを告ぐ折枝からの連絡が来た。
この弁論の狙いは一体何なんだ、その背後にまだ何か事情があるはず......渦中に巻き込まれた画家は、自分自身を見つめ直す勇気を出して、自ら生み出す作品を一新させることができるのか……
先駆条約に向かう
折枝(オリエ): 漂泊者さん、まもなく口頭弁論の時間です。
折枝(オリエ): あ、あの……よろしければ、私と一緒に参加してくれませんか?
折枝(オリエ): もし来てくれるのでしたら、治安署の前で待ち合わせしましょう。
治安署の前で折枝と合流する
折枝(オリエ): こ、こんなに大勢の人がいるなんて……
折枝(オリエ): 本当に自分が出てもいいのかな……やっぱり他の人に任せたほうが……
折枝(オリエ): うーん……よし、決めた!今度の弁論、君が左手を先に挙げたらチャレンジしてみるね。もし右手だったらやっぱり……
折枝(オリエ): ちょ、ちょっと、なんでもう左手を挙げてるの!?私、まだ全部言い終わってないのに……ダメダメ、やり直し。
折枝(オリエ): 君が右手を先に挙げたら、わ、私、行くのやめる……
折枝(オリエ): えっと……右手?で、でも……このことは、私の口からみんなに伝えたいのに……うーん、もう一回初めから……
居要(キョヨウ): 折枝原告、間もなく口頭弁論が始まります。準備ができたらこちらへどうぞ。
折枝(オリエ): わわっ、もうそんな時間……!?えっと……す、すみません、すぐ行きます。
漂泊者:
折枝(オリエ): 漂泊者さん!来てくれたんですね……嬉しい。
折枝(オリエ): 先ほど、明硯さんの画室と駐屯地で集めた証拠を巡尉さんに渡しました。
折枝(オリエ): もう山雲閣の人達も偽物の製造と販売について、言い逃れできないはずです。
折枝(オリエ): でも……陳述を行う代理人が一人必要だって巡尉さんが言っていて……
漂泊者:
折枝(オリエ): えっと……い、いえ、私がやります。いろいろ手伝っていただいた上に、応援までしてもらいました。
折枝(オリエ): だから、逃げずに向き合わなきゃって思うんです!
折枝(オリエ): でも……まさか、こんなに大勢の人が弁論を見に来るなんて……
折枝(オリエ): あとで話す時に、緊張で言い忘れたことがあったら、その場で教えてくれませんか?
漂泊者:
折枝(オリエ): ありがとうございます。あなたがいてくれるのなら、私も安心です。
折枝(オリエ): そろそろ時間ですね。行きましょう。
折枝(オリエ): えっ?で、でも、これまでこんなに大勢の人の前で話したことがなくて……
折枝(オリエ): その……あなたに話してもらって、私が補足説明するのはどうでしょう?
漂泊者:
漂泊者: この件を白日の下にさらすつもりなら、人々に真相をきちんと伝えなければならない。それをできるのは、折枝、あなたしかいない。
折枝(オリエ): ……はい、その通りです。
折枝(オリエ): 今度こそ、ちゃんと最後までやり抜くって決めました。こんなところで怖気づくわけにはいきません。
折枝(オリエ): 私、頑張って話してみます。では、行きましょう。
折枝と一緒に治安署に入る
居要(キョヨウ): 双方とも揃ったようですね。それでは、これより口頭弁論を開始します。
居要(キョヨウ): はじめに、本日の弁論について私から説明させていただきます。
居要(キョヨウ): 折枝原告の訴えによれば、残像傷害事件の犯人と言われている明硯容疑者は、騙されたあるいは脅迫されたことにより、違法な贋作の販売に関わったとされています。
居要(キョヨウ): その間、容疑者は精神面で長期にわたり影響を受けたことで、残像傷害事件を引き起こすに至ったとのことです。
居要(キョヨウ): 今後は、新たに提出された証拠と弁論内容とを照らし合わせ、その結果をもとに明硯容疑者の再審と山雲閣の刑事責任について判断します。
百辞(ヒャクジ): な、なんですと?長官、前におっしゃっていたのと話が違うではありませんか。
居要(キョヨウ): 百辞殿、証拠と見解を弁論前にご提出いただければ、有効な証拠として扱わせていただきます。
居要(キョヨウ): 追加の主張があるようでしたら、弁論の際にお話しください。
居要(キョヨウ): では、原告人もしくは被告人、いずれか一方から弁論を開始してください。
折枝(オリエ): 長官、この事件は……
百辞(ヒャクジ): 長官、私は山雲閣の責任者、百辞でございます。この場をお借りしてお話しするのは、皆様に真実を伝えるためです。
百辞(ヒャクジ): まず、私どもが販売している芸術品はいずれも本物。偽物などございません。それに、明硯は私欲ゆえに危険な作品を創作し、傷害事件を起こしましたが、そもそも私どもと何ら関係はございません。
百辞(ヒャクジ): 私が長年にわたり経営している山雲閣は品行方正な運営で、評判も皆様がかねてよりご存知の通りでございます。
百辞(ヒャクジ): ですが、真心を込めて経営していたとしても、こうした揉めごとは日常茶飯事でしてね。
百辞(ヒャクジ): 残念ながら、画家先生の中には、私どもに受け入れられなかったことを逆恨みして、仕返ししようとする方もいらっしゃるのですよ……
百辞(ヒャクジ): 私どもに評価されず、思い通りにならないと悟った途端、事を大きくし、隙を狙って私どもの名誉を傷つけ、潰そうとするのです。
百辞(ヒャクジ): うわべの話だけを聞けば、皆様はさぞあくどい美術商が立場の弱い画家に圧力をかけているのだろうと思うことでしょう。しかし、それは全くの偏見というものなのですよ!
居要(キョヨウ): 百辞殿、落ち着いてください。
百辞(ヒャクジ): ええ、こうなってしまっては、画家の先生を訴えるほかありますまい。私ども山雲閣は、築き上げてきた信用に傷をつけられました……
百辞(ヒャクジ): 損害賠償責任と公開謝罪を求め、ここに起訴させていただきます!
百辞(ヒャクジ): 私どもは卑劣な誹謗中傷に屈するつもりはございません。これからも、引き続き初心を大切にし、悪党に陥れられないよう、山雲閣を守り続けていく所存でございます!
漂泊者:
折枝(オリエ): ……
阿言(アゲン): 前に山雲閣で絵を買ったことあるぜ!ちゃんとした作品だったし接客も悪くなかった。事件に関わってるなんて考えられないな……
臥雲(ガウン): 被害者なのに泣き寝入りするなんておかしいよ……ってか、明硯って誰?画家?聞いたことない……
千章(センショウ): けっ、どうせ無名の画家見習いが、山雲閣を利用して有名になりたかっただけだろ。
拂青(フツセイ): どうして山雲閣は、いつもこういう厄介ごとに巻き込まれるのかしらね……
居要(キョヨウ): 皆さん、お静かに!
居要(キョヨウ): 双方、引き続き陳述を行ってください。
折枝(オリエ): えっと……
折枝(オリエ): ……
漂泊者: 長官、もう一度この事件について話をさせてください。
漂泊者: 三日前のことです……
漂泊者: あの日、俺は不思議な画家の噂に関する依頼を引き受け、虎口採掘場へ調査をしに行きました。
顧盼(コハン): 漂泊者さん、やっと来てくれたんだ!もう、待ちくたびれたよ。
漂泊者:
顧盼(コハン): そうよ。ここ最近、採掘場の周りで、また変なことが起きてるの。それで、あなたのことを思いついたってわけ!
顧盼(コハン): あなたに任せれば、きっと解決するもの!
漂泊者:
顧盼(コハン): 知ってるかしら?今州で噂される、とある画家の話……
顧盼(コハン): その人が描く絵は、見た人がまるで絵の中にいるかのように錯覚するほど、生き生きしているんだって。
顧盼(コハン): 何よりすごいのは、その画家の絵が完成すると、絵の中の奇獣が現実世界に飛び出してくるってこと。
顧盼(コハン): そして、絵の完成を目にした人は、奇獣に呑まれて跡形もなく消え去ってしまうとか……
漂泊者:
顧盼(コハン): ここ最近、深夜の採掘場で、奇妙な化け物を見たって人がたくさんいるのよ。それも……何度も!
顧盼(コハン): しかも、その化け物、遠目に見ると絵みたいなんだって。あと、現れたばかりの時に近づいても、攻撃してこないとか……
顧盼(コハン): これって、あの不思議な画家の噂そのまんまじゃない!
顧盼(コハン): まあ、もちろん、そう思わない人もいるけどね。こんなの残像の新種か誰かのイタズラだって……
顧盼(コハン): とにかく、噂が噂を呼んで、みんな不安がっているの。それで、あなたに依頼して真相を解明してもらうことにしたのよ。
漂泊者:
顧盼(コハン): さっすが!じゃあ、良い知らせを待ってるわ。
顧盼(コハン): もっちろん!あたし、こういう怪談が大好物なの。真相を知るためなら、報酬はいくらでもはずむわよ!
顧盼(コハン): そうだ。目撃者のリストを渡しておくわ。詳しいことは彼らに聞いてみて。
懐瑾(カイキン): 今日の仕事はここまで!さあ、お楽しみの始まりだ……って、どうした?俺に何か用か?
漂泊者:
懐瑾(カイキン): おっ、よくぞ聞いてくれた。ふっふっふ……何を隠そう、この俺こそが最初の目撃者なのさ。
懐瑾(カイキン): あの日の夜、俺は仲間たちと夜中まで将棋をしていた。で、それが終わって家へ向かう道の途中、突然遠くから奇妙なうなり声が聞こえたんだ。
懐瑾(カイキン): はじめは残像だと思ってすぐに逃げようとしたが、どうもその化け物は残像っぽくなくてな……それに、あいつらはまるで何かに呼び寄せられているみたいだった……
懐瑾(カイキン): そこで気になった俺は、そいつに近づいてみたんだ……
懐瑾(カイキン): 近くで見てみると、そいつ、見た目が普通じゃなかった。目はチカチカ光っていて、モスグリーンの色をした体は液体みたいでベタベタ、さらにはグニャグニャしたツノまで生えていて……
漂泊者:
懐瑾(カイキン): その可能性も……いや、違うな……残像らしくない……あいつら、一切攻撃してこなかったんだ。
懐瑾(カイキン): イタズラなのか……それなら被害者と観客が必要だろ?深夜に外で出没して、周りには誰もいないんだ。違う気がするな……
懐瑾(カイキン): ん?どうしてそんなことを聞くんだ?顧盼のヤツから聞いたのか?
懐瑾(カイキン): あの時、そう遠くない場所で微かに明かりが灯っていて、人が見えたんだ。
懐瑾(カイキン): 風で明かりが揺れていて、姿形までは分からなかった。だが、これだけは言える。あいつらが手に持っていた絵──それを揺らした途端、なぜか化け物が一気に増えた。
懐瑾(カイキン): その後、このことをみんなに話したら、顧盼のヤツがあの不思議な画家の噂とそっくりだって言い出したんだ。
漂泊者:
懐瑾(カイキン): それは……俺にも分からない。でも、会話……いや、言い争いみたいな声がうっすら聞こえたんだ。
懐瑾(カイキン): だが、あの時の俺は化けものに襲われるのが怖くて、そのまま逃げてしまって……詳しい内容までは分からなかった……
漂泊者:
懐瑾(カイキン): 覚えてるっちゃ覚えてるけど……まさか見に行く気か?そんな正体不明の化け物を見てどうする。どうしても行くのなら、せいぜい気をつけろよ。
季風(キフウ): その……採掘場の方ではないですよね?何かお困りですか?
漂泊者:
季風(キフウ): ああ、そのことでしたか。確かに、ここ最近は皆さん、その話で持ちきりですね……
季風(キフウ): 我々で調査した結果、深夜に化け物の群れが現れたことは間違いないようです。ですが、出没する場所には法則性が見られません。
季風(キフウ): 出没時間が深夜に集中している、そして、すぐに消えてしまうからでしょうか。今のところ化け物の被害に遭った人はごくわずかです。
季風(キフウ): 我々のデバイスはあの化け物に反応しませんでした。恐らく、新種の残像である可能性が高いです。
季風(キフウ): この一件を受けて、採掘場周辺の警備と見回りを強化しています。
漂泊者:
季風(キフウ): おかしなところですか?そうですね……うーん……あ、そうだ。
季風(キフウ): 幻境と奇獣を本物に変えるあの画家ですか?その可能性が全くないとは言えませんが、絵に関連する共鳴能力なんて、そう滅多にあるものではないですよね?
季風(キフウ): ある日の夜、我々が調査を行っている時に物音が聞こえたんです。あれはまるで、人の会話のようでした。
季風(キフウ): しかし、小声で早口だったので、具体的な内容までは分かりませんでした。それに確か、残像がいる方から聞こえてきた気が……
季風(キフウ): 今になって考えてみれば、ちょっと変ですよね。もしあれが人だったとしたら、残像のすぐそばにいるのに、なぜ助けを呼ぶ声が聞こえてこなかったのでしょう……
漂泊者:
ケガをした採掘作業員: この腕の傷さ、あの化け物どもに襲われたときに負ったんだ。
ケガをした採掘作業員: あの化け物どもの周りからは人の話し声や笑い声もしたんだ……半分人間で半分化け物の残像もいるのかな?
臆病な採掘作業員: やめてくれよ。こんな夜更けに怖いじゃないか……
臆病な採掘作業員: 勝手にビビってばかりでさ。この前だって、窓の外でスケボーに乗った人がシーツを取り込んでただけなのに、幽霊が出たって1か月も騒いでたし……
興奮した採掘作業員: この採掘場には昔から数え切れないほどの言い伝えがあるんだ。列車の奇怪な通信とか、探査隊による地底探検とか……そして、今また新たなネタが生まれた!
興味津々の採掘作業員: どんなネタ?
興奮した採掘作業員: 不思議な画家のことさ!絵巻に、化け物に、人間……俺、気づいたんだ。この裏には複雑な感情の対立や波乱に満ちた展開があるって……
興味津々の採掘作業員: で、具体的な内容は?
興奮した採掘作業員: ほんと詩情あふれる土地だなぁ!ネタの量も魅力も文句なし!すばらしい……このネタも書き留めておこう。
興味津々の採掘作業員: もう、どんな内容なのよ……はやく教えてったら。
現場に向かう
漂泊者: 情報はだいたい集まった。ちょうど化け物が出てくる時間だし、目撃現場に行ってみよう。
漂泊者: 前方に……何かいる……
漂泊者: 人影……絵筆……あれはまさか……
漂泊者: おかしいな、誰もいない……さっきのは幻覚だったのかな……
漂泊者:
折枝(オリエ): ひょ、漂泊者さん……奇遇ですね……
折枝(オリエ): ごめんなさい。驚かせてしまいましたか?
漂泊者:
折枝(オリエ): ……ちょっと外に出て気分転換を……
折枝(オリエ): そ、その……夜の方が良いアイデアが浮かぶので……
漂泊者:
折枝(オリエ): 違います!
折枝(オリエ): えっと……その……じ、実は私も不思議な画家の正体が気になって、来てみたんです。
折枝(オリエ): ごめんなさい……他の人を巻き込むつもりはなかったので、咄嗟に嘘をついてしまいました。
漂泊者:
折枝(オリエ): 奇獣に魂が宿り、幻境は現実となる……おかしな話ですよね。でも、数年前に一度この噂が話題になったことがあるんです。しかも、当時はただの怪談話ではありませんでした。
折枝(オリエ): それが再び今州に現れたんです。他の人は大ごとだと思わないかもしれませんが、私は何かがおかしいと思います。だから、原因を突き止めたくて。
漂泊者:
折枝(オリエ): はい。「絵の中にいる」錯覚を与える作品を生み出す画家がいたのは事実です。
折枝(オリエ): しかし、こういった特別な能力を持つ作品は、描いた本人の意図とは裏腹に……様々な問題を引き起こしてしまいました。
折枝(オリエ): 私はそのような絵が再び現れて新たな問題を起こす前に、その画家の創作活動をやめさせたいんです。あの時と同じような結末をたどってほしくないから……
折枝(オリエ): ……今のところ、まだ重要な手がかりは掴めていないのですが……私の力不足です……
折枝(オリエ): ……でも、まだ当てはあります。私、ある方に採掘場の近況を聞いてみようと思ってここに来たんです。
漂泊者:
折枝(オリエ): えっと……そうなんですか?分かりました。
石琅と会話する
石琅(セキロウ): 折枝君じゃないか。久しぶりだなぁ!もう絵の具を使い切ったのかい?
折枝(オリエ): あ、い、いえ……
石琅(セキロウ): こちらの方は漂泊者さんだろ?もちろん、噂はかねがね耳にしているよ。いやぁ……まさか折枝君と知り合いだったとは!
漂泊者:
折枝(オリエ): でも、まともにお話をする機会がなくて……
石琅(セキロウ): じゃ、今が絶好のチャンスじゃないか。僕の知る限り、折枝君はいつだって一歩を踏み出そう……って時に諦める節があるからね。
石琅(セキロウ): ほら、何度も心の中で練習してきた言葉があるんじゃないのかい?
折枝(オリエ): そそ、そんなのないです……
石琅(セキロウ): 折枝君、言いたいことがあったらちゃんと言った方がいい。逃げてばかりじゃダメだ。受け身でいたら何も変わらないし、後から後悔するだけだよ!
漂泊者:
折枝(オリエ): はい……店主さんのおっしゃる通りですね。私も、前からこうするべきだって思ってたんです。
折枝(オリエ): 漂泊者さん、こんにちは!私の名前は折枝。初対面ではありませんが、改めまして……漂泊者さん、私とお友達になってくれませんか!
漂泊者: もちろん、喜んで。
石琅(セキロウ): 折枝?折枝?
石琅(セキロウ): ……どうした、折枝君?何か考え事かい?
折枝(オリエ): あ、いえ……えっと……よし!
折枝(オリエ): ひょ、漂ひゃく者しゃ……
漂泊者:
石琅(セキロウ): (また肝心なところで噛んだな……)
折枝(オリエ): 漂泊者さん……こんにちは。わ、私の名前は折枝で、その……いっ、今は画家として、依頼を受けながらもっと良い作品を描けるよう、が、頑張っています……
折枝(オリエ): はっ……話すのは苦手なんですが……わ、私とお友達になってくれませんか!
漂泊者:
石琅(セキロウ): はっはっは、良かった良かった。思えば、折枝君がうちの常連になってから、これほど緊張した様子を見るのも久しぶりだな。
折枝(オリエ): やっ、やめてくださいってば!今日は、あの不思議な画家の噂について聞きたくて、ここに来たんです。
石琅(セキロウ): ああ、それか……知ってるよ。まだ、実際にお目にかかったことはないけどね。
石琅(セキロウ): でもなぁ……そういう画家の先生が実在するのなら、僕が会っていてもおかしくないんだけど。
漂泊者:
石琅(セキロウ): 僕は顔料の商人とも付き合いが長い。うちでは顔料も扱っているから、その画家の先生が店に来ていてもおかしくないんだよ。実際、うちに絵の具を買いに来る今州の先生もたくさんいるからね。
漂泊者:
石琅(セキロウ): 最近か……特にいないな。絵の具の売り上げは相変わらずいまいち、買いに来る先生もみんな顔見知りだ。
石琅(セキロウ): そういえば……鉱石を買いに来た人で、ちょっと変わった人がいたっけ。
石琅(セキロウ): 少し前、うちへ大量の鉱石を買いに来た人たちがいてね。でも、結局買っていったのは安い訳ありの品ばかり。その上買いに来たことを秘密にするよう言ってきたんだ……
石琅(セキロウ): あんなのを買っていくお客さんなんて初めて見たよ……あ、そういえば、だいぶ前に折枝君も買ったことがあったな。
石琅(セキロウ): 確か、あの頃の折枝君は金欠で、練習用の絵の具が買えなかったんだっけ?それで、自作の絵の具で間に合わせるしかなかった……そうだったろ?
石琅(セキロウ): それがすごく印象的でさ。あれから、そういうお客さんにも気を配るようになったんだ。
折枝(オリエ): 口止めされているのに、どうして今私たちに……
石琅(セキロウ): それがさ、そのお客さん、あれから夜中にうちの鉱石を盗みに来たんだ。もちろん巡尉に通報したよ。だから、その後はもう取引していない。
石琅(セキロウ): こういうことをする人なんだ、秘密を守ってやる義理なんかないだろう。
漂泊者:
石琅(セキロウ): ああ、もちろんさ。好きなだけ見るといい。
折枝(オリエ): この様子だと……
熾霞(シカ): あれ?漂泊者?漂泊者じゃん!
熾霞(シカ): どうしてここに?ってか会うの久しぶりじゃない?いやぁ、ここ最近巡寧所が忙しくて、会いに行くヒマなかったんだよね。
熾霞(シカ): あ、折枝もいたんだ!あたしのこと覚えてる?ほら、月追祭の時に会ったでしょ。
熾霞(シカ): ……ってあれ?なんか顔色悪いけど……大丈夫?
折枝(オリエ): あっ、こ、こんにちは……ありがとう……だ、大丈夫……
熾霞(シカ): 月追祭の時にあんたに描いてもらった絵、うちの巡寧所で大好評だったよ!今もまだ飾ってあるんだ!
折枝(オリエ): ほ、本当に?気に入ってもらえたのなら、嬉しい……
熾霞(シカ): 今度、巡寧所のみんなでおもてなしするって話になってるんだよ。みんな、あんたに直接お礼を言いたいんだってさ!
熾霞(シカ): そうだ!折枝はこの後戻るの?思い立ったが吉日っていうし、一緒に戻らない?
折枝(オリエ): えっと、その……ま、まだ調査がある……けど……はい……
漂泊者:
熾霞(シカ): んんん?何か用事でもあるの?
熾霞(シカ): 真相解明?あんたたち、一体何の調査してるの?
漂泊者:
熾霞(シカ): そーゆーことね!そりゃ確かに、戻って宴会開いてる場合じゃないね。
折枝(オリエ): す、すみません……
熾霞(シカ): 大丈夫だって!そうだ、何か手伝ってほしいことがあったら、あたしを呼んで!
漂泊者:
熾霞(シカ): そう!それなんだけど……ちょっと前に採掘場で残像の傷害事件が起きてさ。巡尉が人手不足だから、手伝いに来たってわけ!
熾霞(シカ): でもあたしたちが来たら、残像のヤツ、急に大人しくなっちゃったのよ。そんで、今はひとまず目撃者に聞き取り調査してるとこ。
折枝(オリエ): これは何の音?何が起こっているんでしょうか……?
熾霞(シカ): うそっ、こんな偶然ある?ちょっと待って、今情報が来て……残像が出たみたい。あたし様子見に行ってくる!
漂泊者:
折枝(オリエ): わわわ、私たちも行くんですか?
漂泊者:
折枝(オリエ): それもそうですね。ですが、他にも……
折枝(オリエ): 漂泊者さんと合流した後、採掘場の調査を終えた私たちは、熾霞 巡尉とともに残像の出没現場へ向かいました。
折枝(オリエ): そこで、私たちは明硯さんによる傷害事件の詳しい状況を知り、不思議な画家の噂の真相を突き止めたのです。
漂泊者: (絵筆を手に取って、折枝の緊張もほぐれてきたみたい)
漂泊者: (この後の陳述は折枝に任せて問題ないだろう)
残像の様子を見に行く
残像を倒す
折枝は言いそびれた言葉を伝えようとしたが、最後まで口にしなかった。
折枝(オリエ): はぁ……漂泊者さん、ごめんなさい。
漂泊者:
折枝(オリエ): あの時、私から熾霞さんにきちんと伝えられていたら、代わりに説明してもらわなくて済んだのに、って……
折枝(オリエ): べっ、別に嫌いとかじゃないんです!ただ慣れていないせいで、熾霞さんの親切にどう応えたらいいか分からないまま……断りきれなくて……
漂泊者:
折枝(オリエ): 今後は、その場で自分の気持ちを伝えられるよう頑張ります……なるべく迷惑をかけないように……
漂泊者:
折枝(オリエ): ありがとうございます……
説明を終えた後、2人は他の人に状況を尋ねることにした。
熾霞と研究員と会話する
熾霞(シカ): やっと見つけたぞ、このお騒がせ野郎!ふ~、被害も深刻じゃなさそうで良かったよ……漂泊者、助けてくれてありがと!
漂泊者:
研究員: 臨時の検証を行った結果、現時点では、現場で見つかった絵巻の周波数が残像の行動に影響を与えた可能性があると考えられます。
研究員: それと、絵巻に残されていたエナジーは、あの画家のオーバークロック寸前の共鳴能力によるものです。
研究員: 今のところ、あの画家の状態は安定しています。ひとまず、滅多なことはないでしょう。
漂泊者:
研究員: 同様の事件の再発を防ぐため、絵巻は我々の方で調査を行い、最終的に残像との関連性について結論を出す予定です。
熾霞(シカ): ありがと!現場の後片付けはあたしたちに任せて!
漂泊者:
熾霞(シカ): さっきあたしが話を聞いたら、自分がやったって認めてたよ。でも、深掘りしようとしたらうんともすんとも言わなくてなっちゃった……
熾霞(シカ): うーん……なーんか様子がおかしいんだよなあ……ああ、いや、今は現場を片付けないと!周りに影響が広がったら良くないし。
漂泊者:
熾霞(シカ): もちろん!
床にある絵を調べる
絵が揺れ動き、思わず目がくらみそうになった。その瞬間、描かれた景色が現実に現れたかのような錯覚が起きた。
怪我人と会話する
???: な……んで……
折枝(オリエ): 明硯さん?どうして……
漂泊者:
折枝(オリエ): 何度かお会いしたことがあります。以前、一緒に絵を学んでいた仲間なんです。
明硯(メイケン): 折枝ちゃん!……違うの……私……
明硯(メイケン): ケガを……させたのは……私……過ち……
漂泊者:
明硯(メイケン): 私……だけ……
漂泊者:
明硯(メイケン): ……
明硯は、これ以上この話題を続けたくなさそうだった。
明硯は、これ以上話を続けたくなさそうだった。
目撃者と会話する
隠風(インフウ): 頭が……痛い……
漂泊者:
隠風(インフウ): 少しだけならな。奇妙な幻覚が出てくる前は、誰かとケンカしてるみたいだったぜ。
隠風(インフウ): 「止めないで」とか「うまくいった」とか「世の中は金と名声でしょ」とか言ってたっけな……
隠風(インフウ): いやあ、暴走を止めてくれる人がいて助かったよ!じゃないと、今頃どうなっていたことか……
隠風(インフウ): ふん、これまでいろんな芸術家を見てきたが、こんな危険な作品のために他人の命を犠牲にしようとする輩は初めて見たぜ……
阿素(アソ): 良かった~、巻き込まれなくて……
漂泊者:
阿素(アソ): うーん……半分くらいはね。
漂泊者:
阿素(アソ): アタシが見た時は……あの画家は興奮状態で、筆を振り回しながら大声で叫んでてさ……
阿素(アソ): 見間違いかもしれないけど……描いてた絵が動き出したように見えたの。それから「シュッ」って音がして、どこからか残像がたくさん現れた。
阿素(アソ): で、奴ら、その場にいる人を攻撃し始めたから、アタシは急いで逃げたんだ……
漂泊者:
阿素(アソ): はっきりとは分からなかったけど、逃げている時に「やめて、そこまでにして」みたいなことを言ってたかな。あの残像たちを止めようとしてたんだろうね。
漂泊者:
折枝と会話する
折枝(オリエ): うーん、変なの……あれ?漂泊者さん!戻ってきたんですね。
漂泊者:
折枝(オリエ): も、もう分かったんですか?
漂泊者:
あの絵は現実との境目が曖昧になっている。幻覚を引き起こすのも無理はない。
皆一様に、過去のものとは異なる奇妙な幻覚を目にしたと話している。
漂泊者:
折枝(オリエ): つまり……明硯さんの共鳴能力が、絵巻を通じて少しの間、人々に幻覚を見せたということですよね。
折枝(オリエ): これまでの噂も……彼女の能力を偶然目にした人が言い始めた、ということでしょうか?
漂泊者:
漂泊者: 噂に出てくる奇獣は、夜中に見て驚いた人が真相も分からないまま他の人に伝え、尾ひれがついていた姿なのではないだろうか。
漂泊者: 実は、折枝と会う前から、この場所は何だか変だと思っていた。でも、その後折枝が現れたから、それが折枝の気配と思い込んでしまい、深く気に留めていなかった。
漂泊者: 今になって思えば、あの妙な空気は、明硯の共鳴能力がもたらした波動だったのだろう。
折枝(オリエ): 明硯さんは、あの時からここにいたってことですか?全然気づかなかった……
折枝(オリエ): でも……結局、明硯さんはなぜこのような作品を描こうと思ったのでしょう……
漂泊者:
折枝(オリエ): 以前の明硯さんを知っていますが……そんなことのために、危険な行為をするような人ではないはずです。
漂泊者:
折枝(オリエ): 明硯さん、ずっと私の手を引っ張っていて……でも、何を言っているのかはさっぱりで……
折枝(オリエ): でも、多分引き続き調査をしてほしい、って意味だと思うんです。もしかすると、この事件にはまだ何か裏があるのかもしれない……
折枝(オリエ): 確か、以前の明硯さんには共鳴能力なんてなかったはずです。
折枝(オリエ): それに……もしかしたら、私と何か関係があるかも……
漂泊者:
折枝(オリエ): えっ、一緒に調査ですか?そ、その……嫌とかじゃなくて!ほほ本当は、前から一緒に調査を続けたいなって思ってたんです!
折枝(オリエ): 漂泊者さん、よ……よかったら、私と一緒に調査を続けましょう!
漂泊者:
折枝(オリエ): 私が決めるんですか?実は、まだそこまで考えていなくて……
折枝(オリエ): そうですね……明硯さんとは今州の画室でお会いしたことがあるんです。その後もそこで創作を続けていたのでしょうか……
折枝(オリエ): ひとまず行ってみませんか?彼女の他の作品から、何かしらの手がかりが得られるかもしれません。
折枝(オリエ): でも、私、こういう捜査をしたことがないので、この提案が正しいのかどうか……
漂泊者:
折枝(オリエ): はい。
折枝(オリエ): 事件の詳しい状況を知った私たちは、原因を突き止めるため、調査を継続することにしました。
百辞(ヒャクジ): それ以上調査して何になるというのかね?現場の目撃者だって言っていたんだろう、全ては画家の私利私欲のせいだと。それなら……
折枝(オリエ): あの、百辞さん……最後まで話をさせてください……
画室に向かう
折枝(オリエ): ええ、間違いありません、ここです。画室を使っていた痕跡もあります。
漂泊者: じゃあ、一緒に手がかりを探そうか。
折枝(オリエ): はい。
画室に入る
画紙を調べる
机の隅に、封の解かれた紙がある。普通の紙より薄くて手触りが良さそうだ。
折枝(オリエ): この紙……
漂泊者:
折枝(オリエ): これは伝統的な「白玉堂紙」という紙で、きめ細かくて筆が乗りやすい上に、ボカシの出方も綺麗で、繊細な感情や情景を描写するのにとっても適した紙なんです。
折枝(オリエ): 啓南の『雲山行旅図』に、宜林の『斎渓早春図』……古来より、数多くの名画にこの紙が使われてきました。
折枝(オリエ): あ、えっと……すみません、話がそれてしまいましたね……あれ?この紙、パッケージにセールの表記が……買ったばかりみたい……
漂泊者:
折枝(オリエ): はい。白玉堂は毎年決まった時期にセールを行います。ここにある紙は私が2日前にセールで買ったのと全く同じパッケージなんです。
折枝(オリエ): おそらく、同じ日に買われたものだと思います。でも、すでに半分使い切っている……きっと事件の直前まで、ずっと徹夜して描いていたのでしょう。
漂泊者:
折枝(オリエ): 紙を変えると、作品の仕上がりが変わるんです。つまり、紙の異なる性質を利用することにより、作品の雰囲気に変化をつけられます。
折枝(オリエ): 「白玉堂紙」は私にとってもお気に入りの紙ですよ。とはいえ、今はセールの時に買いだめするしかないのですが……
折枝(オリエ): あの値段でこの質……もはや買わない理由なんてありません!私はセールの時にいつも箱買いしてます。運ぶのに丸一日かかるとしても、十分お値打ちなお買い物です!
漂泊者:
折枝(オリエ): 3箱で1箱、5箱で2箱おまけしてくれるんです。他にも、毎週割引クーポンが発行されたりとか……えへへ……
折枝(オリエ): いいんですか?じゃあ……ほ、本当にお願いしちゃいますよ!
漂泊者:
折枝(オリエ): ……私たち、画家としての方向性は同じなんです。完成した作品の出来も、さほど違いはありません。
折枝(オリエ): 手法こそ違いますが、作画にかかる時間もほぼ同じです。だから、明硯さんが制作にかける時間はだいたい分かります。
折枝(オリエ): 絵筆を手に取った途端、狂ったように描き始め、満足する絵が完成するまで描き続ける……画家って、こういう人ばかりなんですよね。
絵を調べる
おびただしい数の作品を目にした折枝は、衝撃で言葉を失ったようだった。
漂泊者:
折枝(オリエ): そうでもないですよ。この作品は筆の進みが遅く、落ち込んでいた時に描かれた。対して、こちらの作品は筆運びが軽やか。きっとこの時は心身ともに晴れやかで、集中して描き上げたのでしょう。
折枝(オリエ): 画家は自分の気持ちに気づいていない、あるいは気づいていながら作品に影響が出ないよう心がけていますが、やはり気持ちはどうしても筆に残り、見る者に伝わるんです。
漂泊者:
折枝(オリエ): はい。画家にとって絵は心の窓のようなもの。言葉にできない言葉を……絵に込めるんです。
折枝(オリエ): とはいえ、明硯さんがずっと同じ絵を描き続けているのはおかしい……絵の描き方も以前の明硯さんと全然違います。
漂泊者:
折枝(オリエ): 「碧波青山の影は窓に映りて、千岩万谷夢境に連なる。世は鉛華の夢を溶かし、描きし煙霞は己を溶かす」
折枝(オリエ): この絵は『採華山居図』といって、採華庄から臨んだ遠方の景色を描いたもので……
漂泊者:
折枝(オリエ): はわわゎ!いつの間にか絵の具が……
折枝(オリエ): あれ、払ったら一瞬で落ちた……普通の絵の具なら、こんな簡単に落ちないのに……
服を調べる
古びた服の上に、うっすらとシミが残っている。
漂泊者:
折枝(オリエ): 確かに……墨と絵の具を何度もすすいだ後に残ったシミのように見えます。
折枝(オリエ): もしかしたら、思いついたアイデアを残すために、この服を使ったのかもしれません。
漂泊者:
折枝(オリエ): 私もたまにやるので……
折枝(オリエ): 外でスケッチに夢中になっていると、紙が足りなくなってしまうことがあるんです。でも、どうしてもその綺麗な景色を絵に残したい場合は服の上にスケッチします。
漂泊者:
折枝(オリエ): 布は昔の画家にとってのキャンバスですからね。なので、服はその場しのぎの画材として申し分ありません。
折枝(オリエ): もちろん、洗っても絵の具が綺麗に落ちることはないのですが……この機会に異なる画材の表情を知ることもできるんですよ。
日記を調べる
折枝(オリエ): どうして……
漂泊者:
折枝(オリエ): 自分の作品が気に入らないのは、創作者の性です。
折枝(オリエ): 私も同じような気持ちになったことがあります……何となく他人の作品の方が優れている気がして憧れたり、その人を超えようとしたり……
折枝(オリエ): 新たに作品を仕上げても、次の日に見るとやっぱりうまく描けてないなって感じたり……
折枝(オリエ): 「まだいける、このまま頑張って修正してみよう……」とか、「だめだ……これじゃ頼んでくれた人に迷惑をかけちゃう」とか……
折枝(オリエ): 描く時の頭の中は、いつだってこんな感じです。創作していない時まで、こうした考えに囚われてしまうことだってあります……
折枝(オリエ): これは……道を踏み外してしまう原因になるんです。
折枝(オリエ): 私にも、スランプの時期がありました……でも、だいぶ経ってから、自分がどうしたいのか、だんだんと分かってきたんです。
折枝(オリエ): 一番大事なのは、自分の気持ちを大切にして、心の声に従って創作すること……
折枝(オリエ): でも、もし私がスランプに陥っている時に明硯さんと同じような壁にぶつかっていたら、正しい判断をしていたかは分かりません……
折枝(オリエ): 明硯さんは脅迫され、苦しみながら助けを求めていました……だから、彼女のために事件の真相を明らかにして、助け出してあげたいんです。
漂泊者:
かすを調べる
折枝(オリエ): 漂泊者さん、これを見てください……
折枝(オリエ): 自作の絵の具に見えますが……どうして植物が使われているんでしょう?
折枝(オリエ): 私の知らない配合でしょうか……
漂泊者:
折枝(オリエ): 煎じ薬のかす?
漂泊者: 明硯は、ここ最近薬を飲んでいたんだろう。これは薬を煎じた後に残ったかすで、片付けるのを忘れたんじゃないかな。
折枝(オリエ): これを煮ると薬に……そっか!薬局にあったあの植物は、インテリアじゃなかったんですね。
漂泊者:
折枝(オリエ): わ、私は薬を煎じたことがなくて……体調を崩しても、数日我慢すれば自然に治りますし……
折枝(オリエ): 昔家族が薬をくれた時はいつもそのまま飲んでいたので、煎じる必要があるのを知らなくて……
折枝(オリエ): す、すみません……世間知らずで……
床に散らばった花瓶の欠片を調べる
割れた花瓶のかけらが散らばっている。
また、乱雑に積まれた紙の山の隙間には、探し物をした痕跡が残っている。
漂泊者:
折枝(オリエ): おそらく……あああ、違う、そうじゃないかも……
漂泊者:
折枝(オリエ): いっ、いえいえいえ、何となく思いついただけで、違うと思います。
漂泊者:
折枝(オリエ): わ……分かりました……
(落ちた場所からして、花瓶はあの棚の上にあったってことだよね)
(あと、棚が動いた跡がある。きっと何かがぶつかって元の位置からずれた。それで花瓶が落下したんだ)
(ここには水たまりもできてる。まるで水槽の水がこぼれたみたい……あれ?グルッポの跡に似てるけど……)
(分かった、そういうことか!この推理を披露すれば、漂泊者さんもきっと驚くはず!)
折枝と会話する
折枝(オリエ): 水槽から飛び出したグルッポは花瓶にぶつかり、紙の山に突っ込んでしまった……そして、叱られるのを恐れて窓から逃げ出したのです!
漂泊者:
折枝(オリエ): え?グルッポを飼う人っていないんですか?
折枝(オリエ): 昔、家の壁一面がガラス張りで、その中で何匹も飼っていたんです。だから、てっきりグルッポが流行っていたのかと……
折枝(オリエ): ごごごめんなさい、私の調査、全然ダメダメでした……
漂泊者:
折枝(オリエ): そ、そうですか?じゃ、じゃあ……引き続き推理を進めてみます!
折枝(オリエ): そうですか……私、結論を急ぎすぎたみたいです。次こそは、もっとちゃんとした推理を導き出してみせます!
漂泊者:
折枝(オリエ): あ、はい。でも……ああいう絵筆で描かれただけの幻影は、あまり長く維持できないんです。
折枝(オリエ): あと、この能力を使うのは久しぶりで、まだ勘を取り戻せていなくて……
漂泊者:
折枝(オリエ): はい。日常生活では共鳴能力を使う必要ありませんからね。
折枝(オリエ): それに、絵を描く時は自分の本来の力だけで描きます。自分の本当の実力の理解、向上に必要なことですので。
折枝(オリエ): 能力を使えば作品を鮮やかで華やかに彩ることができますし、欠点もごまかせます。でも、私はそんなことをしたくない……
折枝(オリエ): それで、だんだんこの能力は使わなくなったんです。
折枝(オリエ): でも、真相解明のための調査なら、使ってもいいかなって思って。
漂泊者:
折枝(オリエ): はい、それは間違いないかと……
折枝は少し落ち込んでいるように見え、この話を続けたくないようだ。
漂泊者:
外の手がかりを調べる
足跡を調べる
漂泊者:
折枝(オリエ): そうですね。
漂泊者:
折枝(オリエ): はい……誰かが画室に何かを探しに来た。あるいは……盗みに来た?なら、きっと明硯さんの作品と何か関係がある物を盗みに来たはず……
折枝(オリエ): でも、ここへ来た人は窓を割って慌てて逃げ出した……きっとその時棚にぶつかった弾みで、花瓶が倒れたのでしょう。
漂泊者:
漂泊者: このことは山雲閣、そして、明硯が取り乱した原因と関係がありそう……足跡をたどってみよう。
折枝(オリエ): そして、画室に残された手がかりを追う私たちが辿り着いたのは、追放者の拠点でした。
折枝(オリエ): そこで、私たちは新たな手がかりを手に入れます。明硯さんと山雲閣の背後に隠されたあることを教えてくれる手がかりを……
追放者の拠点に向かう
運搬車両のそばに鉱石のかけらが散らばり、車体には色のついた跡が残されている。
漂泊者:
折枝(オリエ): 車体の状態を見るに……何か硬いものを運んだみたいですね。
漂泊者:
折枝(オリエ): もしかして……彼らは運んできた鉱石から絵の具を作り、それをまたどこかへ持って行った……
折枝(オリエ): 店主さんが言っていた鉱石を盗んだお客さんって、彼らじゃないですか?
漂泊者:
絵の具を調べる
大量に砕かれた鉱石と絵の具が積み重なっている。しかし、そこには包装も説明書きもない。
折枝(オリエ): 紅針晶 、 紫晶……どれも絵の具の原料ですね。あと、これらの鉱石は、あの取引記録の内容とほぼ一致しています。
漂泊者:
折枝(オリエ): ここにある絵の具は、彼らが鉱石から手作りしたもののように見えます……
折枝(オリエ): 正規品の絵の具であれば、塗った後そう簡単に落ちることはありません。ですが、この手作りの絵の具はサッと拭くだけで落ちるほど質が悪いです。
漂泊者:
折枝(オリエ): ……あの画室の絵の具です。うっかり服を汚してしまった時、この話をしましたよね。
折枝(オリエ): もしかして……明硯さんは、追放者からこの安価な絵の具を買っていたのでしょうか?でも、だとしたら、画室にまで立ち入ったのはなぜ……
折枝(オリエ): そのようですね。もしかして……明硯さんは、追放者からこの安価な絵の具を買っていたのでしょうか?でも、だとしたら、画室にまで立ち入ったのはなぜ……
漂泊者:
中立の追放者: あんたたちは?
折枝(オリエ): えっと、こ、こんにちは……私たちは……
漂泊者:
中立の追放者: 絵に用事があるんなら、ここへは何しに来たわけ?
折枝(オリエ): あ、あの、それは……明硯さんの姿が見当たらなくて……
中立の追放者: そう。なら、そのうち帰って来ると思うから、ここで待つといいわ。
中立の追放者: ここに買い物に来る客なんて、いるわけないでしょ。いいから帰りな。
折枝(オリエ): ち、違います。私たち、明硯さんの絵を買いに来たんです。でも誰もいなかったので、ここへ聞きに来たんです。
中立の追放者: あら?そういうことだったの?あたしの勘違いだったようね。
漂泊者:
中立の追放者: いや……なんでもない。そのうち帰って来ると思うから、ここで待つといいわ。
漂泊者:
中立の追放者: ええ、そうよ。本音を言うと、みんなあの子のことを気に入ってるの。自分の生活が苦しい時でも、あたしたちを助けてくれたしね。
中立の追放者: だから、あたしも一応あの子の友人。絵をもらったこともあるわよ。えっと、どこに置いたかしら……
中立の追放者: あ、あったあった!見てよ、絵には詳しくないけど、素敵な絵でしょ?
折枝(オリエ): はい、私もそう思います。軽快なタッチで、創作中ののびのびとした楽しい気持ちまで伝わってくる素晴らしい作品です。
漂泊者:
中立の追放者: 特に思い当たるフシはないけど……
素朴な追放者: そういや、新作に取りかかってるみてぇだったな。それも、こそこそと。あと、外で危険な作画を試してるのも……
中立の追放者: ああ、あたしも見たことあるわ。確か、見た人を引き込むような、臨場感のある絵を描きたいって言ってたっけ。
中立の追放者: でも、あの子、不安定な周波数まで使っていて、見るからに危険だったわ。あたしたちも注意したんだけど、全く耳を貸してくれなくてね……
相槌を打つ追放者: そうなんだよ!俺もあの危険な絵を見て、描くのをやめるよう言ったんだ。そしたら、こっちが怒られた!まったく、芸術家ってやつは何を考えてんだか……
折枝(オリエ): あの、皆さんは普段どんなことで生計を立てているのですか?
中立の追放者: え?あたしたち?そりゃ……狩りに出たり、依頼を受けたりとか……
漂泊者:
中立の追放者: それだけだ。あとは、日々をただ慎ましくに生きてるってだけ。
中立の追放者: え……あっ、そうだ!ははっ……すっかり忘れてたわ。時々絵の具を作って、それを画家に売って小遣い稼ぎしてるの。
相槌を打つ追放者: そうそう、明硯もよくここへ絵の具を買いに来るから、いつもお友達価格で売ってやってるんだ!
漂泊者:
折枝(オリエ): ……私、気づいたことがあるんです。
漂泊者:
折枝(オリエ): はい、あの追放者たちも明硯さんも……誰一人として、本当のことを言っていません。
折枝(オリエ): 追放者たちの手が黒っぽかったのは、長い間墨に触れているから……
折枝(オリエ): 仮にそうだとしたら、絵の具と墨を大量に作っていることになります……
漂泊者:
折枝(オリエ): はい、それに……先ほど彼らのもとで目にした絵と画室にあった作品、これらは明硯さんの日記の内容を裏付けるものです。
折枝(オリエ): 日記の内容からして、明硯さんは心境に激しい変化が起きていて、作品もその影響を受けていたようでした。
折枝(オリエ): なので、恐らく……変化のきっかけとなる出来事は、山雲閣と関わった後に起こったのだと思います。
漂泊者:
折枝(オリエ): いいですね、そうしましょう。
折枝(オリエ): はい、そうかもしれません。
二人は静かに夜まで待った。
追放者に近づく
折枝(オリエ): 話し声が聞こえますね。
漂泊者:
折枝(オリエ): はい、では私はデバイスで録音しておきますね。何かあった時のために……
素朴な「追放者」: ったく……明硯の絵が山雲閣に届いてないとかなんとか、また百辞さんが催促してきやがった
中立の「追放者」: 隠風があの子を追い込んでケガさせたせいじゃない。ええいいわよ、絵が描けなくなれば、依頼も諦めるしかないんだから
隠風(インフウ): 俺が何をしたっていうんだ?いつも通り注意しただけだろう。
隠風(インフウ): 最近反発するようになってやりづらかったから、ビシッと言ってやっただけだ。俺だってまさかあんなにメンタルが弱いとは思わなかったよ。
隠風(インフウ): だが、今日はうまくかわしたから、巡尉に怪しまれなくて済んだぜ……安心しろ、全部明硯のせいにしてるから、誰も俺らの存在には気づかないだろ。
中立の「追放者」: でも、今日は明硯の調査をしに来た人がいたわ。巡尉じゃなかったけど、まさか……あたしたちのことがバレたんじゃないわよね?
素朴な「追放者」: んなこたねーだろ。絵の具を作ってるって別に普通のことじゃねえか。
隠風(インフウ): 俺たちは追放者のフリをしてるんだ。そもそも、こんなことしてたって怪しむヤツなんかいない。それに、知られたところでどうってことない。
素朴な「追放者」: とは言え、しばらくは気をつけねーとな。百辞さんが言ってただろ、裏でやってることだから、何があっても山雲閣だけは巻き込んじゃダメだって。
折枝(オリエ): 山雲閣……確かに、明硯さんの背後にはずっと彼らの存在があります。
折枝(オリエ): 昼間彼女の名前を出した時に顔色がおかしかったのは、そのせいだったんですね……
漂泊者:
折枝(オリエ): 隠風……
折枝(オリエ): そういえば、鉱石の取引記録に、隠風という署名がありました。
漂泊者:
漂泊者: 思えば、あの時の隠風は傷害事件の責任を全て明硯になすりつけ、その上、明硯が不純な動機で事件を起こしたと強調していた。
漂泊者: 昼間のあいつらの口ぶりそうだ。気づかれないようにするため、あらかじめ口裏を合わせていたのだろう。
漂泊者: そのせいで、これまでは明硯の視点でしか考えられていなかった。
折枝(オリエ): あの、私、思いついたことがあるんです……でも、彼らの言っていた「あの絵」を探し出してからじゃないと、確信が持てなくて……
漂泊者:
折枝(オリエ): 今の時間帯は昼間より人が多いです。どうやって中へ入るつもりですか?
漂泊者:
折枝(オリエ): でも、もし彼らに気づかれたら、手がかりを隠されてしまうんじゃ……
漂泊者:
折枝(オリエ): なるほど。
追放者の服を手に入れた二人は、さっそく彼らの服に着替えた。
追放者を倒す
追放者と会話する
隠風(インフウ): 誰だ、お前ら!?何もここまでしなくたっていいだろ!……追放者だからっていじめやがって!
素朴な「追放者」: こいつらだ!昼間、画家のことを聞きにきた奴ら!
漂泊者:
中立の「追放者」: あんたたちに言う筋合いなんてないわ!
漂泊者:
隠風(インフウ): 明硯のことは……仲間が昼間に話したのが、俺たちの知る全てだ。どうだ、これでもまだ納得いかねーのか?
漂泊者:
隠風(インフウ): 分かった、分かったって!言えばいいんだろ!
中立の「追放者」: ちょっと……
隠風(インフウ): 何か文句でもあるのか?どうせこいつには敵いっこねーんだ。俺はこんなところで命を捨てる気はない。
隠風(インフウ): 言え。お前らは何が知りたいんだ?
漂泊者:
素朴な「追放者」: あいつがケガしたのは全部隠風のせいだ。あいつが筆を握れなきゃ、こっちも依頼を達成できない。ホントいい迷惑だよ。
隠風(インフウ): けっ、寝返るのが早い野郎だな!だから言っただろう、俺はちょっと注意しただけ……
隠風(インフウ): 最近反発するようになってやりづらかったから、ビシッと言ってやっただけだ。俺だってまさかあんなにメンタルが弱いとは思わなかったよ。
拠点に潜入する
百辞(ヒャクジ): 長々と喋っておいて、証明できたのは我々と関わりがあることだけだろう。真の犯人が誰かは、わかっていないではないか。
百辞(ヒャクジ): もう一度言っておくが、贋作を描いたのも、売ったのも、傷害事件を起こしたのも、全てあの画家がやったことだ。
百辞(ヒャクジ): 私はあの画家を手伝ってやっただけにすぎない。私の手助けなしに、あんな絵が売れるとでも思うのかね?
折枝(オリエ): ……百辞さん、話題をそらさないでください。
百辞(ヒャクジ): あの画家ときたら、この私の恩を仇で返したのだよ。今さらこんな風に疑われるとは、全くもって心外だ。
折枝(オリエ): み、皆さん……この録音の音声をお聞きください。
音声再生: 「ったく……明硯の絵が山雲閣に届いてないとかなんとか、また百辞さんが催促してきやがった」
音声再生: 「隠風があの子を追い込んでケガさせたせいじゃない。ええいいわよ、絵が描けなくなれば、依頼も諦めるしかないんだから」
音声再生: 「最近反発するようになってやりづらかったから、ビシッと言ってやっただけだ。俺だってまさかあんなにメンタルが弱いとは思わなかったよ」
折枝(オリエ): ただ模写の練習をしたかっただけの明硯さんは、あなたたちのせいで変わってしまったんです。
折枝(オリエ): 騙して、道を踏み外すよう仕掛け、果ては脅迫して……そうやって、彼女は少しずつあなたたちの贋作作りに手を貸すようになっていったんです。
折枝(オリエ): 私には分かります。精神的に弱っていなければ、あのような事件が起きることはなかった……でも、あの時の明硯さんは、贋作作りをやめられない状況に陥っていました。
折枝(オリエ): それなのに、彼女が中心となって起こしたことにするのは、あまりにも不公平です。
百辞(ヒャクジ): あの画家のことはさておき、贋作作りとは何のことだ?その録音のどこが証拠になるのかね?
漂泊者:
漂泊者: どれも、あの絵がただの模写ではなく、山雲閣の金儲けの手段になっていることを裏付けるものだった。
百辞(ヒャクジ): はっはっは、本物だの偽物だの言って、ここにいる人たちをたぶらかすのはやめてくれるかね。
百辞(ヒャクジ): 贋作は、真の作者がいてはじめて成り立つ。だが、これらの絵はどれも明硯本人が描いたもの。同じものをたくさん描いたところで、いずれも本人の作品だからねぇ。
折枝(オリエ): ……百辞さんはこの絵をご存知でしょうか?
百辞(ヒャクジ): もちろん知っているとも。あの不思議な画家が描いた『採華山居図』だろう。
折枝(オリエ): では、この絵と他の絵の違いはお分かりでしょうか?
百辞(ヒャクジ): 当たり前だ。他の作品と違って、この絵の幻境はまるで本物の世界のように見る人を引き込む。これは不思議な画家……つまり、明硯の共鳴能力によるものだよ。
折枝(オリエ): ですが、このいくつかの絵を見る限り、明硯さんの共鳴能力は一度も安定したことがないように見えます。そして、安定しているのはこの原作だけです。
百辞(ヒャクジ): そんなことにこだわって何の意味があるというのだ?違いを示す証拠でもあるのかね?
百辞(ヒャクジ): まったく、子供じみたことばかり言って。画家が常に安定した作品を創作できるとでも?
折枝(オリエ): 芸術を追求する画家なら、普通は作品に上質な画材を使用します。そうすることで、作品の仕上がりが良くなるからです。
折枝(オリエ): 私は画室の調査をしていた時、うっかり絵の具をこぼしてしまいました。ですが、それによって絵の具の違いに気づいたんです。
折枝(オリエ): 原画に使用されている絵の具は、明るく澄んだ色をしています。色持ちも良く、ボカシも自然です。
折枝(オリエ): そして、贋作に使用されている絵の具は、訳あり品の鉱石から作られたもの。本物の質には酷く劣り、ひと拭きで落ちてしまいます。
折枝(オリエ): 墨の成分を調べるだけでも、本物か偽物かの違いは分かりますよ。
百辞(ヒャクジ): そんなもの、それぞれ使った顔料が違うだけの話ではないか!君、明硯がいつも同じ絵の具を使わなければならない決まりでもあるのか?
百辞(ヒャクジ): これのどこが、我々が贋作を作っていた証拠になるというのだ!!
折枝(オリエ): ……
折枝(オリエ): 『採華山居図』の本当の作者は、私です。
百辞(ヒャクジ): いやはや、感動する話だったよ。だが、君が原作者だと言ったところで何の証拠もないがねぇ?
折枝(オリエ): ……長官、この贋作の中からひとつの絵を選んで、少し手を加えてもよろしいでしょうか?私がその画家であることを、証明したいんです。
居要(キョヨウ): 構いません。
漂泊者:
折枝(オリエ): はい。明硯さんの出来事がきっかけで、私もあることに気づきました。
折枝(オリエ): 自分を受け入れてこそ、人の心を動かす絵が描けるようになれる……
折枝(オリエ): これまでの絵は……私の内面を表現したものであり、私の人生の一部でもあります。これまで経験した全ての出来事が、今の私を作り出しているんです。
折枝(オリエ): 私がしたいのは、自分が原作者であることの証明だけではありません。むしろ……
折枝(オリエ): これが私の共鳴能力によって引き起こされた事件なら、私にも責任があります……このまま見て見ぬふりをして、事件に巻き込まれる人が増えてほしくないんです。
明硯の本音: あなた……あなただったのね……やれることは全部やったのに……一体何が足りないのよ!
残像を倒す
明硯の本音: 運が良かっただけじゃない……親の手助けがなければ……今頃、あなたが手にしている名声は、全て私のものだったんだから!
明硯の本音: まだ……追いつかない……
明硯の本音: どうして……こんなにそっくりなのに……
明硯の本音: きっとあの能力のせいだわ……
折枝(オリエ): 違う、これは能力とは関係ない……
折枝(オリエ): あなたも、うらやましいほどの作品を描いていたんですよ……のびやかで、自由で……
折枝(オリエ): 私たちは画風こそ違っても、創作に取り組む時の心境は同じだった……そうでしょう?
折枝(オリエ): 成功にお手本なんてありません……
折枝(オリエ): あなただけの作品は、心の奥底にある気持ちに従って、初めて描けるようになるのですから。
「生のない絵巻」を出る
治安署に戻る
折枝(オリエ): 事件の真相を知って、何度自分を責めたことか……
折枝(オリエ): この能力を使わなくなれば、私の絵で誰かが傷つくことはなくなると思っていたのに……またこんなことが起きてしまうなんて……
折枝(オリエ): でも、私、漂泊者さんの言葉を聞いて、我に返ったんです。
折枝(オリエ): 悪いのは絵じゃなくて、それを利用して人を傷つける悪人の方。
折枝(オリエ): 百辞さん。人々から信頼されるべき美術商のあなたたちは、私利私欲のために作品を、そして画家の心を傷つけた。
折枝(オリエ): 画家が大切にしていたものが、お金もうけの道具にされてしまったんです……原作者だろうと贋作の協力者だろうと、画家である私たちを侮辱していることに変わりはありません。
折枝(オリエ): 今ここに、かつての原画と私がこの場で描いた絵があります。これでお分かりになったでしょう。
居要(キョヨウ): 10分ほど前に、治安署から連絡がありました。関係者となる追放者を取り押さえ、絵の所在を突き止めたとのことです。
居要(キョヨウ): 百辞被告、他に意見はありますか?
百辞(ヒャクジ): ……
居要(キョヨウ): では、我々で明硯容疑者の事件について再調査を行います。その上で山雲閣の刑事責任についても精査を行い、早急に全面的な調査へと踏み切る予定です。
居要(キョヨウ): 以上で、本日の弁論を終了します。
治安署を出る
折枝と会話する
折枝(オリエ): やっと終わりましたね……私、ちゃんと話せていたでしょうか……
漂泊者:
折枝(オリエ): え?そ、そんな……さっきは勢いに任せていただけです。本当は緊張で汗びっしょりでした……
折枝(オリエ): 漂泊者さんが隣にいてくれなかったら、最後まで話せなかったと思います……だって、心を落ち着かせるために、ずっと捜査のことを思い出していましたからね。
折枝(オリエ): あっ、その、つまり、あの時は何を話してもちゃんと聞いてくれたし、すごくリラックスできたから……
折枝(オリエ): あの時は一緒に調査をしてくれて、ありがとうございます。漂泊者さんのおかげで少しずつ自信を取り戻せたからこそ、胸を張って弁論に臨むことができました。
折枝(オリエ): 山雲閣が処罰されれば、あの贋作ビジネスも幕を閉じるでしょう……そして、無理やり協力させられていた画家たちも、自由を取り戻せるはずです。
折枝(オリエ): ありがとうございます、漂泊者さん。こんなに晴れやかな気持ちになったのは、本当に久しぶりです!
漂泊者:
折枝(オリエ): この後、明硯さんの様子を見に行ってみようと思います。彼女が事件に関わっていた以上、私から全てを話したいんです。
折枝(オリエ): 漂泊者さん、この後何か予定はありますか?
漂泊者:
漂泊者: こっちの依頼も、彼女が原因となって起きたことだし、明硯のことも山雲閣のことも、一緒に真相を突き止めた。だから、一緒に見に行こう。
折枝(オリエ): そういえばそちらの依頼はもう完了したのですか?
漂泊者: 真相にたどり着いたあの日に、すでに完了しているよ。
折枝(オリエ): 分かりました。では一緒に行きましょう。
明硯のお見舞いに行く
明硯(メイケン): 折枝ちゃん……久しぶり。
折枝(オリエ): 明硯さん、その傷は……
明硯(メイケン): 研究員さんが看病してくれてるから大丈夫。会話ぐらいは平気だって。こっちの人は……漂泊者さんよね?
漂泊者:
明硯(メイケン): 二人のことは全部聞いたわ。ありがとう……私を、あの苦しい日々から解放してくれて。
明硯(メイケン): 前から分かっていたわ。折枝ちゃんは一見弱々しく見えるけど、自分の中で許せないことが起きたら、誰よりも真剣に立ち向かう人だって。
明硯(メイケン): それと、私……謝らなくちゃいけないの。
明硯(メイケン): 私があなたを超えようとしたせいで、こんなに迷惑をかけてしまった……本当にごめんなさい。
明硯(メイケン): ……ケガしたおかげで目が醒めたわ。これからは、二度と……あなたの絵は真似しない。
明硯(メイケン): というか、そもそも、私は絵描きには向いていなかったんだと思う……
折枝(オリエ): 私、明硯さんにお渡したいものがあるんです……
折枝は、明硯に絵巻を手渡した。絵巻を広げた明硯は、その絵の世界に釘付けになっていた。
明硯(メイケン): ふふっ、やっぱり……こんな生き生きとした絵を描けるのは、あなたしかいないわ。私の絵とは比べ物にならないもの……
折枝(オリエ): これは明硯さんが描いた絵……
折枝(オリエ): はじめてお会いした時に、明硯さんが私にくれたんです。
明硯(メイケン): えっ……あははっ……笑っちゃうわね。あなたの絵を真似しているうちに、自分の絵まで……見分けがつかなくなっちゃうなんて。
折枝(オリエ): 明硯さんの絵が、私に劣るなんてことはありません。作者の身分から離れ、作品そのものに向き合えば、自分の絵の魅力に気づけるはずです。
折枝(オリエ): 明硯さん、本当の自分を取り戻しましょう。明硯さんなら、きっと誰もが認める画家になれますから。
明硯(メイケン): ……ありがとう折枝ちゃん、この絵を持ってきてくれて……本当にありがとう……
明硯は再び絵巻を広げ、絵の中に描かれた全てを、まじまじと眺めていた。自分の世界に入ってしまったかのような彼女を見て、二人はそっとその場を後にした。
折枝(オリエ): 明硯さん、真剣に受け止めてくれたみたいです。
折枝(オリエ): 以前何度かお会いした時、絵についての議論になると、彼女はいつも夢中になって話していました。あの時の情熱は、そう簡単に消えるものではないと思うんです。
折枝(オリエ): 今思えば、あの頃の私たちは純粋な気持ちで議論し、切磋琢磨し合う友人のような仲でした。
折枝(オリエ): だから……彼女が事件で苦しんでいるのを見て、放っておけなかったんです。
折枝(オリエ): 事件のせいで、明硯さんが絵を描かなくなってしまうのは嫌なんです……
漂泊者:
折枝(オリエ): 私が最後まで頑張れたのは……画家たちのために、真相を暴きたかっただけじゃないんです。私が頼りない人だって、漂泊者さんに失望してほしくなくて……
折枝(オリエ): 採掘場にいた時にお伝えしたかったんですが、あの時は上手く伝えられなくて……
漂泊者:
折枝(オリエ): 漂泊者さん、私とお友達になってくれて、一緒にこの事件を解決してくれて、本当にありがとうございます。
漂泊者:
漂泊者: 今はまだ、過去の記憶と自分を完全に取り戻せたわけじゃない。でも、折枝と一緒に過ごした日々と思い出、その全てが大切な宝物なんだ。
漂泊者: 折枝、手伝ってくれてありがとう。折枝のこと、そしてこの世界のことが、少しだけ分かった気がするよ。
折枝(オリエ): 漂泊者さんったら、分かるまでに時間がかかるんですね。
漂泊者:
折枝(オリエ): えへへ……冗談を言える勇気も、漂泊者さんがくれたんですよ。
漂泊者:
折枝(オリエ): そ……それは……
折枝(オリエ): もう少し時間がかかるかもしれません……