とある漂泊する音の始まり・上

すでに残鳴は奏で始めている……あなたはその導きに従い、己の過去を探す旅に出る。それは、新たな、未知に満ち溢れる旅になるだろう。

とある漂泊する音の始まり・上

こもった優しい女性の声: ……溺れ……変ですね……。

こもった優しい女性の声: ……外傷はなく、呼吸も……異常なし。脈も……なので、すぐに目を……でしょう……。

優しい女性の声: ……目を覚ましました。

元気な女性の声: え、見せて見せて!

元気な女性の声: いやあ、ホントよかった、もうちょっとであたしの十八番、初級巡尉必須応急処置スキル——心肺蘇生法!を使うところだったよ。

元気な女性の声: まあ、まだ使ったことないんだけど……。

優しい女性の声: ……熾霞。

元気な女性の声: ごめんごめん、寝起きにこんなペラペラ喋られちゃ迷惑だったかな……。

優しい女性の声: 具合はどうですか?体に異常はありませんか?

漂泊者:

熾霞(シカ): あたしは熾霞……で、こっちが秧秧!

漂泊者:

秧秧(ヤンヤン): 雲陵谷うんりょうだにという瑝瓏こうりゅう領地内の今州城こんしゅうじょう外の場所です。

秧秧(ヤンヤン): その格好、瑝瓏の方ではないみたいですね……漂泊している旅人……もしくは帰郷の方でしょうか?

漂泊者:

秧秧(ヤンヤン): なぜここにいるのか、それに、自分が誰なのかもわからない、ですか……

熾霞(シカ): こんな後遺症、白芷からも聞いたことないよ。

秧秧(ヤンヤン): 風から危険の予兆を感じます。天空海てんくうかいの発生……新たな無音区むおんくが形成される予兆です。

漂泊者:

熾霞(シカ): このままここにいると危ないよって意味。

熾霞(シカ): あ、やっぱり天空海のせいで瓢箪デバイスの信号がなくなった……通信も切れちゃって誰とも連絡つかないね。急いで白芷と合流しないと。

熾霞(シカ): にしても、あんた本当になんも覚えてないんだね!まあ平気平気!

熾霞(シカ): 何か質問があったら、移動しながら話してよ。私と秧秧が全部じっくり、バッチリ教えてあげるからさ!

秧秧(ヤンヤン): 漂泊者さん……元の名前を思い出すまで、そう呼んでもいいですか?

漂泊者:

秧秧(ヤンヤン): ここに長居するのはあまり良くありません。もしよろしければ、漂泊者さんも私たちと一緒に行きませんか?

漂泊者:

熾霞(シカ): よし、じゃあ行こう。

秧秧(ヤンヤン): 他にもないわけではないのですが……谷の地形はとても複雑です。ここはひとまず一緒に行きましょうか?

熾霞(シカ): よっし、決まりだ!さ、行こう!

雲陵谷を出る

熾霞(シカ): あんたは何も覚えてないみたいだけど、これだけは99%……いや、100%確定できる!それは、あんたも共鳴者だってこと!

秧秧(ヤンヤン): 漂泊者さんは手の甲に音痕おんこんがありますし、瓢箪も持っています。見た目は少し違いますが、この二つはどちらも共鳴者の特徴です。

熾霞(シカ): それと、秧秧が共鳴能力で風から情報を読み取ってるみたいに、一部の「共鳴者」はなんとなく「無音区」が形成されてることを感知できるんだ。

熾霞(シカ): ま、あたしには何もわからないんだけどね、へへ。

熾霞(シカ): それに、共鳴者じゃない人は、よっぽどのことがない限り野外をうろついたりしないからね~。

熾霞(シカ): 今は静かで平和だけど、急に危ない残像が出てくるかもしれないから気を付けて!

熾霞(シカ): って、言ったそばから!?

熾霞(シカ): 記憶はなくても、戦い方は覚えてるんだな。

熾霞(シカ): 次は絶対先手を取るぞ!でないと、馬小芳マーショウファン……いやいや……熾霞らしくないんだ!

秧秧(ヤンヤン): どうしましたか?どこか具合でも…?もしかしてさっきの戦いで……?

漂泊者:

秧秧(ヤンヤン): 歳主さいしゅについて思い出したのですか?

漂泊者:

秧秧(ヤンヤン): これは今州の歳主の彫像です。歳主は瑝瓏にある「一庭六州いっていろくしゅう」にそれぞれ1人いて、皆異なる外見をしています。

秧秧(ヤンヤン): 今州の歳主は「カク」と呼び、龍の姿をしているのです、まさにこの彫像のように。

秧秧(ヤンヤン): 今州の歳主指引機枢、「角」の彫像です。

秧秧(ヤンヤン): 歳主は瑝瓏にある「一庭六州」にそれぞれ1人いて、皆異なる外見をしています。

漂泊者:

秧秧(ヤンヤン): 文明と歴史がある所に、歳主は存在する……瑝瓏は長い歴史と豊かな文明を誇る土地です。なので、最も多くの歳主がいる場所でもありますね。

秧秧(ヤンヤン): また、瑝瓏の各地域をそれぞれ統治する歳主ですが、元は一つの存在だった、という記録もあります。

秧秧(ヤンヤン): もちろん、他の場所にも歳主はいます。でも、数としては瑝瓏よりも遥かに少ないです。

秧秧(ヤンヤン): 漂泊者さん、気を付けて!

熾霞(シカ): いやあ、今のは危なかったね。……ってかあんたたち、初めての共闘なのに息ピッタリだったじゃん!

熾霞(シカ): それに、さっきの秧秧の戦う姿……まるで、我が子を守るお母さんのよう……

熾霞(シカ): コホン、毅然と漂泊者を守るその姿、カッコよかったよ! それに、残像を倒すあの手際の良さ!……いやあ、私ですら何が起きたのかわからなかったよ!

秧秧(ヤンヤン): ……熾霞。

熾霞(シカ): えへへへ……あ、白芷といえば!もうすぐ待ち合わせ場所に着くよ!

熾霞(シカ): ああ、えっと、白芷っていうのは治療の共鳴能力を使える人で、谷底であんたを見つけた時あたしたちと一緒にいたんだ。簡単な応急処置をあんたにしてくれたのも白芷ね。

秧秧(ヤンヤン): あの時の漂泊者さん、まるで溺れているかのような呼吸の異常があったのですが、口と鼻には異常物は見受けられず、それに衣服も綺麗なままという不思議な状態でした……。

熾霞(シカ): これも秧秧が感知してくれたんだよ。あの時の秧秧、頬を赤くしながら、ずっと「ごめんなさいごめんなさい」って……

秧秧(ヤンヤン): し、熾霞!

熾霞(シカ): あ、信号塔はもうすぐだよ。

熾霞(シカ): 信号塔に着いたら登録しておくと便利だぞ。それに、半径5メートル以内なら信号塔が敵の攻撃を防いでくれるから安全な場所でもあるんだ。

秧秧(ヤンヤン): 漂泊者さん、デバイスを貸してもらえますか?

秧秧(ヤンヤン): これで大丈夫です。機種とバージョンが違っても、データの送信などの基本機能が使えるようになりましたよ。

小型信号塔を解放

秧秧(ヤンヤン): もうすぐ谷口に到達します、高低差がありますので、デバイスのパラシュートモジュールを使うと便利ですよ。

秧秧(ヤンヤン): 漂泊者さんのデバイスにもパラシュートモジュールが搭載されているみたいなので。後で使え方を教えますね。

熾霞(シカ): 谷口を出て、もうちょっと歩いたら今州城に着くよ!

熾霞(シカ): 城内はどこよりも安全な場所なんだ。なんてったって、天工が造った防御施設は難攻不落。中枢信号塔が城全体を覆うように保護シールドを出してるからね。

漂泊者:

熾霞(シカ): へへ、でしょう?

熾霞(シカ): まあ、他にすごい場所はあるかもしれないけど、ここはあたしの故郷。とっても大切な場所なんだ。

秧秧(ヤンヤン): 今州は、石崩れの高地と北落野原ほくらくのはらに面しており、関所と要塞の役割を持つので、瑝瓏の要衝と呼ばれています。

熾霞(シカ): 白芷、ここで待ち合わせするって約束したのに……来ないな……。

秧秧(ヤンヤン): 天空海がここに発生します。

熾霞(シカ): ……え、無音区……

熾霞(シカ): ……いつの間に……?

熾霞(シカ): ……来た時はまだなかったよね!?

秧秧(ヤンヤン): ここへ来た時には、感知できませんでした……。

熾霞(シカ): ええ!?早いにもほどがあるって!

熾霞(シカ): 天空海には追跡機能でも付いているのか?まるであたしたちの後を追ってきたみたいじゃん……。

秧秧(ヤンヤン): ……無音区の中央……

漂泊者:

熾霞(シカ): あれって白芷じゃん!

熾霞(シカ): 白芷!

熾霞(シカ): 白芷——!

秧秧(ヤンヤン): 遠すぎて声が届きません……。

漂泊者:

秧秧(ヤンヤン): 形成されたばかりの無音区は一定時間「潜伏期」に入るので、比較的安全ではあります。

漂泊者:

秧秧(ヤンヤン): 潜伏期の持続時間は無音区の形成時間に依存します。形成時間が短いほど、潜伏期が長い……そして、潜伏期が長い無音区からは、強力な残像が生まれます。

秧秧(ヤンヤン): 「今は」安全なはずです。

秧秧(ヤンヤン): 潜伏期の持続時間は無音区の形成時間に依存します。形成時間が短いほど、潜伏期が長い……そして、潜伏期が長い無音区からは、強力な残像が生まれます。

熾霞(シカ): サンプリングをし終わったらこの辺りで待ち合わせしようって約束したんだ。でも、まさか無音区のど真ん中まで行っちゃうなんて……。

秧秧(ヤンヤン): いえ、白芷なら無音区の危険性を十分理解しているはずです。形成されたばかりの無音区は一定時間「潜伏期」に入ります……

秧秧(ヤンヤン): そして、形成時間が短いほど、潜伏期が長くなる……だからこの無音区は、一定時間内であれば安全なはずです。

漂泊者:

熾霞(シカ): ヒーローショー今州流行りの演劇のシナリオなら、あり得るかも!

熾霞(シカ): あり得る……でも、いったい誰が仕掛けたんだろ……?

漂泊者:

熾霞(シカ): なるほど……ヒーローショーでも、一見おちゃめなやつが、実は緻密な計画を立てる策略家だった!ってのはよくあるよね……。

熾霞(シカ): って、そんなのありえないから!

秧秧(ヤンヤン): ……漂泊者さん。

熾霞(シカ): ふむ……ヒーローショーでも、主人公の傍らにいる物静かなヒロインが、実は陰謀を企むブレインだった!ってのはよくあるよね……。

熾霞(シカ): って、そんなのありえないから!

秧秧(ヤンヤン): 本当にそう言い切れますか?

熾霞(シカ): えっ!?

秧秧(ヤンヤン): 確かに、人間の言葉や行動を模倣する「唸り種」という残像が存在しますが、ここまで精巧な真似ができるとは……。

漂泊者:

秧秧(ヤンヤン): はい……それにパラシュートの滑空距離では、無音区の範囲を超えられません……まずは、白芷のもとへ急ぎましょう。

秧秧(ヤンヤン): デバイスの滑空機能を使いましょう。漂泊者さん、私に任せてください。

パラシュートで無音区に入る

熾霞(シカ): 白芷!白芷——!

熾霞(シカ): 白芷、ここ無音区だよ。なんでこんなところに……?

熾霞(シカ): ねえ、白芷聞いてってば、あたしたち……あれ?

白芷(ビャクシ): 大丈夫、みたいね……よかった……。

熾霞(シカ): もう、すっごい元気だよ!さっきも巨浪級の残像をやっつけてたし!いやあ、ホントに元気だね、へへっ!

秧秧(ヤンヤン): はい、特に問題はなさそうです。

漂泊者:

秧秧(ヤンヤン): 白芷はただ、あなたのことを心配してくれているんです。たしかに、さっきまで倒れていたあなたを、むやみに連れまわすべきではありませんよね……。

秧秧(ヤンヤン): え?違いますよ?

秧秧(ヤンヤン): 白芷はあなたのことを心配してくれているんです。たしかに、さっきまで倒れていたあなたを、むやみに連れまわすべきではありませんよね……。

漂泊者:

白芷(ビャクシ): ……おしゃべりするなら場所を変えましょう。

???を倒す

熾霞(シカ): 秧秧!漂泊者!

熾霞(シカ): どこにいる!

熾霞(シカ): 白芷と一緒にバリアの外に締め出されて、中に入れないんだ!そっちは?

秧秧(ヤンヤン): 漂泊者さんと一緒です。それと……変な残像も……。

白芷(ビャクシ): おそらく、その残像の能力よ。

白芷(ビャクシ): ……気を付けて。

熾霞(シカ): 秧秧!漂泊者!

熾霞(シカ): 大丈夫か?怪我は?

漂泊者:

熾霞(シカ): いやあ、めっちゃ焦ったよ……あのバリア、頑張って壊そうとしたんだけど、ビクともしなくてさぁ……。

秧秧(ヤンヤン): 私も大丈夫です。

秧秧(ヤンヤン): ……あれほどの残像を軽々倒せる漂泊者さんって……。

漂泊者:

秧秧(ヤンヤン): 私は特に何も……すべて漂泊者さんのおかげです。

熾霞(シカ): 漂泊者が最後に使ったあの技って何!?「火の英雄」の必殺技みたいだった!

熾霞(シカ): そう謙遜しなさんなって!バリアの外からでもはっきり見えたよ……

熾霞(シカ): あんたがちょちょいっと残像を倒しちゃうところをね!

秧秧(ヤンヤン): 雲陵谷はそれほど危険な場所ではないはずなのですが……

熾霞(シカ): そんなことより、これ見て!

漂泊者:

秧秧(ヤンヤン): これは……「残響」ですね。

熾霞(シカ): おお、さっすが!あんたツイてるね!

秧秧(ヤンヤン): ……漂泊者さんは「残響」と「音骸おんがい」について覚えていますか?

秧秧(ヤンヤン): 万物は周波数で構成され、音には必ず響きが残る……

秧秧(ヤンヤン): これは「残響」と呼ばれるもので、デバイスのデータドックを使えば回収できます。

熾霞(シカ): デバイスってのは共鳴者たちが持っているあの瓢箪のことな!瑝瓏の技術は世界一ーッ!

熾霞(シカ): でも、残像を倒したら必ず残響が手に入るってわけじゃないんだ。えっと、これはデータドックのレベルが関係してて……

秧秧(ヤンヤン): データドックのレベルが高いほど、残響を入手できる確率が上がります。残響を手に入れれば「音骸」という、心強い味方になってくれますよ。

秧秧(ヤンヤン): ですが、先ほどデバイスが発した警報は「怒涛級」以上の残像の出現を知らせるもの……

秧秧(ヤンヤン): 漂泊者さんのデータドックレベルで、この残響を回収できるのでしょうか……?

熾霞(シカ): とりあえずやってみよう!

熾霞(シカ): あ、ダメか……。

漂泊者:

熾霞(シカ): まあまあ、ご飯はよく噛んで食べろって言うしさ!弱い敵の残像を回収していけば、いつかこんなのもいけるようになるって!

熾霞(シカ): たしか、この辺りに小さい「アツツ」がいるんだ。あれ可愛いんだよ!後で一緒に捕まえに行こ!

白芷(ビャクシ): 時間の経過とともに残響は霧消し、天空海も消える……そうすれば、遮断された通信信号は自ずと回復する。

白芷(ビャクシ): そして無音区は次なる蘇りを待ち、再び静寂を取り戻す。

白芷(ビャクシ): ……

白芷(ビャクシ): この異常現象は、各所に報告する必要がありそうね。

白芷(ビャクシ): まずはここを離れましょう。

お腹……

お腹すいた……

熾霞(シカ): こ……この力は一体……?

熾霞(シカ): あ、あんた…………

熾霞(シカ): まだそんな技を隠し持ってたのか!

熾霞(シカ): こんな共鳴能力見たこともないよ!え、もしかしたらまだ他にもすごい力持ってるんじゃない?残像丸吞みとか、音骸炭焼とか!

漂泊者:

熾霞(シカ): 共鳴能力じゃない?

秧秧(ヤンヤン): 漂泊者さんの失った記憶と関わりがあるのでしょうか?今ので何か思い出したことはありますか?

熾霞(シカ): それもそうか。でもどんな味がした?辛かった?それとも甘かった?

熾霞(シカ): そういえば、聞いた話によると「グルッポ」を使った料理があるんだって。どの州の名物料理だったかなぁ?

熾霞(シカ): あ、グルッポってのは残像の一種ね。

熾霞(シカ): うぅ、どんな味なのか気になる……でも、何であれ辛ければ美味いに違いない!

秧秧(ヤンヤン): 気分はどうですか?何かおかしなところはありませんか?

秧秧(ヤンヤン): お体は?具合は?吸収した残響の影響は?白芷、漂泊者さんを華胥かそ研究院に連れて行って、共鳴医療課で診察を……

漂泊者:

白芷(ビャクシ): ……

秧秧(ヤンヤン): 白芷?

白芷(ビャクシ): 身体が音骸を吸収する……特異な例ではあるけれど、全く前例がないというわけじゃないわ。

秧秧(ヤンヤン): 身体が音骸を吸収……?

秧秧(ヤンヤン): 『紀世通鑑』瑝瓏篇の冒頭にこんな言葉があります……

秧秧(ヤンヤン): 「……斯の世に降りし天人、乾坤を指掌に宿し、その身に音骸を納める。一気凝化、生まれし盤古、天地を覆い、経緯相応を以て、四方を照らす。而して瑝瓏史は始まり、初めて庭州を分かつ……」

漂泊者:

熾霞(シカ): 要するに、むかーしむかし、まだデバイスが世に存在していない時代にすごいお方がいて——

熾霞(シカ): 最も強い残像を吸収して、音骸に変換し——

熾霞(シカ): その力を利用して、この世界を再構築した。それから瑝瓏の歴史が始まった……ってとこかな。

漂泊者:

熾霞(シカ): やったぁ、褒められた!……って喜びたいところだけど、実はこのお話、子供の頃にずっと読み聞かされてたものなんだ……。

熾霞(シカ): 秧秧みたいに原文を全部暗記するなんてできないけど、大体の話なら覚えてるよ。

熾霞(シカ): 秧秧ストップストップ!

熾霞(シカ): 学宮がっきゅうで暗記させられた時の苦しい思い出が蘇る……というか、それってただのお伽噺じゃんか。

熾霞(シカ): ま、これは大昔の話なんだけどね。共鳴者は普通の人よりも長生きすることはあるけど、長くても数百年程度。それに対し瑝瓏の歴史は数千年もあるんだ。

秧秧(ヤンヤン): また漂泊者さんの謎が深まりましたね……。

秧秧(ヤンヤン): これが今私たちが使っているデバイス「盤古デバイス」と「データドック」の名前の由来となっています。

熾霞(シカ): 本当かどうかはさておいて、これすっごい昔の話だよ。今州なんて概念もまだないんじゃない?

熾霞(シカ): もしかして漂泊者、あたしたちのご先祖様だったりする?

白芷(ビャクシ): まだデータサンプルと研究分析が足りない……結論を出すには至らないということ……

白芷(ビャクシ): 漂泊者。

熾霞(シカ): あれ?受信できるようになった?

秧秧(ヤンヤン): これは……辺庭へんていから今州全域への映像メッセージですね。

今汐(コンシ): 今州の皆さん、お忙しいところ失礼します。今州の今令尹れいいん——今汐です。

今汐(コンシ): 月追祭げっついさいが近づいており、今州にも各地から客人が訪れています。この素晴らしい祭日、民の期待に応え、人々が楽しく過ごせるよう心から願うばかりです。

今汐(コンシ): 古来から今州は残像潮を退ける前線拠点としての役を担ってきた険しい土地……後退も失敗も許されない——そんな戦争の重責を果たしてきた。

今汐(コンシ): ですが、今州を支えてきた民のおかげで、このような繁栄と平和を築くことができました。皆さんの存在が、世界に輝く今州を作り上げたのです。

今汐(コンシ): 我々は常に恐れに屈せぬ意志と、温かく誠実な態度を抱いてきました。それは、これまでも、これからも変わることはありません。

今汐(コンシ): そこで、皆さんに一つお願いしたいことがあります。

今汐(コンシ): ここを訪れる者の中に、余と今州、そして瑝瓏にとって非常に重要な客人がいるのです。

今汐(コンシ): ……この時を長く待ち望んでいました。

今汐(コンシ): あなたは目覚めたこの世界にきっと混乱していることでしょう。

今汐(コンシ): 周囲で起きている奇怪な現象にも、すでにお気づきになられているかと思います。

今汐(コンシ): ですので、もし今州境内に留まるおつもりでしたら、今州城内の辺庭でお会いできないでしょうか?

今汐(コンシ): あなたの疑問すべてにお答えすることは叶いません。しかし、諸々の助力をあなたに提供させていただくことはできます。

今汐(コンシ): もちろん、これは要請ではなく、単なるお願い——如何なる道を進まれようとも、それはあなた自身の選択でございます。

今汐(コンシ): 従って今州の皆さま、お願いします。その客人と出会うことがあれば便宜を図り、精一杯もてなしてください。

熾霞(シカ): 何と言うか……

白芷(ビャクシ): 令尹様が言っていた客人は……

秧秧(ヤンヤン): ……漂泊者さんですね。

漂泊者:

熾霞(シカ): これが……しゅせ……いや、漂泊者の実力なのか!

漂泊者:

熾霞(シカ): 「これが首席の実力だ!」

熾霞(シカ): 有名なヒーローショーの名ゼリフだよ!まだ完結してなくて、すでに4年くらい続いてるのかな。首席指揮官とその小隊の話はホント痺れるよなぁ。

秧秧(ヤンヤン): 漂泊者さん、このヒーローショーを見たことはありますか?

秧秧(ヤンヤン): 漂泊者さんのこういうところは白芷に似てますね。

秧秧(ヤンヤン): 月追祭は春龍祭しゅんりゅうさいと共に瑝瓏の伝統ある祭日で、一年で最も盛り上がるお祭りです。

秧秧(ヤンヤン): 各庭州にはそれぞれ独自な祭日やイベントがあります。今州は辺境の要地ではありますが、例に洩れずそういった日はとても賑やかなんですよ。

秧秧(ヤンヤン): 令尹様のお名前ですか?

秧秧(ヤンヤン): お名前は「汐」の一文字です。令尹様は、歳主の就任式が行われた後、令尹を継ぐ者として州の苗字を授かり、州と運命を共にされることを誓われます。

熾霞(シカ): って、そうじゃなくて!

秧秧(ヤンヤン): 漂泊者さんはどうしますか?

漂泊者:

秧秧(ヤンヤン): 谷にいた時、漂泊者さんは今州歳主の彫像を見て、歳主の記憶の話をしましたよね。

秧秧(ヤンヤン): その記憶が本当の出来事なのかはわかりませんが、令尹様からの通信内容が本当なら、漂泊者さんの経歴は今州と深い関係があるはず……

秧秧(ヤンヤン): ですが、令尹様の客人かどうかに関わらず、漂泊者さんは私たちの大切な……

熾霞(シカ): ——友達、だよね!

熾霞(シカ): だって一緒にすっごい大変な目に会ったんだもんね!こんな短時間であんな量の残像見たことないし、最後にはすごい大物もいたし……まあ、ほとんど漂泊者が倒してくれたけど、へへっ。

熾霞(シカ): とにかく、今州城に着いたら絶対攀花食堂ぱんふぁしょくどうの名物料理をご馳走してあげるからさ!

漂泊者:

白芷(ビャクシ): 体調を考慮して、今州城に着いたら、一回全面的に検査した方が良さそうね。

白芷(ビャクシ): 音骸を吸収して以降、明白な異常は見られないけれど、他の危険性が潜んでいる可能性はまだ否定できないわ。

白芷(ビャクシ): それと、今あるデータサンプル、とりわけ身体の症状に関する情報がとても少ないの。もし道中で残響を見つけたら、また試してみて。でも無理は禁物よ。

熾霞(シカ): そうそう、無理はよくない。やっぱ健康第一だからね!ほら、秧秧もめっちゃ心配してるよ!

秧秧(ヤンヤン): もし具合が悪くなったら、必ず私たちに伝えてください。