幽客の残り声

危機がひとまず収まった頃、椋羽が何かあなたに話したいことがあるようだ。時間があれば、彼女に状況を聞きに行こう。もしかすると、かつて神居で共に行動したあの尋幽客に、まもなく再会できるかもしれない。

椋羽と会話する

椋羽(リョウウ): 漂泊者、最近はどうだ?しばらく会ってないが。

漂泊者:

椋羽(リョウウ): もう治っている。前回の戦いは秧秧ヤンヤンのおかげで、いい連携が取れたんだ。幸い、無事に終わって良かった。

椋羽(リョウウ): それより、煙舒エンジョのばあさんから言付ことづけを預かっている。「ジンちゃんが帰ってきましたよ。顔を出したらどうでしょう」とな。

漂泊者:

椋羽(リョウウ): 清宵司騎セイショウしき軍策府ぐんさくふに提出したレポートに、大きな手助けをしてくれた尋幽客じんゆうかくがいると書いてあるんだが……景燃ジンランのことだな?

漂泊者: 彼を知ってるのか?

椋羽(リョウウ): 銜翎村かんれいむらは小さい。同じ村で育った子どもは、多少なりとも知っている。

煙舒の所に向かい、景燃について尋ねる

煙舒(エンジョ): 来てくれましたか。ジンちゃんは、さっき私に会いにきてくれましたよ。

煙舒(エンジョ): あの子は、ここ数年どんな仕事をしてるのか……軍策府ぐんさくふから表彰状が届いたくらいでして。

漂泊者:

煙舒(エンジョ): はぁ、いいとは言えませんね。でも、私の顔を見たら、すぐに意地悪そうな笑顔を見せてくれましたよ。

煙舒(エンジョ): 当時、私と三刀サントウがあの子を引き取った時、彼は腹いっぱいの怒りで満ちている野良猫のようだったんです。乱暴な気性以外、何も持っていなかった。

煙舒(エンジョ): ここにしばらく住んでいると、徐々に荒い性格が収まっていきましたね。両親のことで、夢州城むしゅうじょうに行きたいなんて騒がなくなりましたし。

漂泊者:

煙舒(エンジョ): はぁ、年を取ると、つい口が滑ってしまいますね。それについては、本人に聞いてください。あの子なら、近くの林の中の荒地にいるはずですから。

漂泊者: 分かった、ちょうど俺も返したいものがある。

煙舒(エンジョ): これを渡してもらえませんか?またすぐ、どこかへ消えてしまうかもしれませんし……これ、あの子の大好物なんですよ。

漂泊者: 景燃ジンラン青蚨せいふの飾りが、まだ俺のところにある。そろそろ彼に返そう)

アブ: (……何をもらったんだ?すごくいい匂いがするぞ)

漂泊者: 言っておくが、人の物を預かってるだけだ。これは諦めるんだな。

アブ: (えっ、そんなぁ!)

景燃と合流する

景燃(ジンラン): ……

景燃(ジンラン): おう、また会ったな。ここの用事が済んだら、こっちから会いに行くつもりだったのに。

漂泊者: 景燃ジンラン、その目は……

景燃(ジンラン): ああ、夜更かしをして本を読んでたら、ちょっと目を使い過ぎてな。でも、華胥かそ研究院からもらった目薬を使えば治るぜ。

漂泊者:

景燃(ジンラン): もう慣れてるぜ。「にゃーちゃん」に、ちっと借りを作りすぎたけどな。しばらくしたら治るってよ。

にゃーちゃん?: 小僧、こんな姿になっても口数が減らんとは。わしが手を貸してなければ、とっくに下で師匠と仲良く遊んでいたぞ。

景燃(ジンラン): ほう、一目で分かるぜ。師匠の奥方が持たせたんだろう?ありがとよ。

景燃(ジンラン): アンタも気付いてるだろうけど、木禺モクユウに借りがあるって言ったのは、このことなんだ。

漂泊者: ここは、あなたの両親の……

景燃(ジンラン): そんなに気を使うことはねぇ、空っぽだからな。

景燃(ジンラン): 昔、夢州むしゅう城で琢鈞堂たくきんどう刃偶じんぐうが暴走してな。死者の中には、職人の夫婦がいた……オレの両親だ。

景燃(ジンラン): その後、オレは身内をなくし、町を彷徨うことになってな。そしたら師匠に拾われて、玄方地界げんぽうちかいに連れてかれた。

景燃(ジンラン): あの時、頭ん中にあったのはひとつ……夢州むしゅう城に戻って、両親の仇を討つことだけだった。でもよ、師匠に説教されて、ここに空っぽの墓を立てたんだ。

景燃(ジンラン): このバカ者、まずは自分のことを考えろ。復讐は大人になってからでいい、なんて言われちまってさ。そんで、オレは理解できねぇことがあるたび、ここに来て心を落ち着かせてる。

景燃(ジンラン): もうちょっと年を取ってから、オレは一度夢州むしゅう城に帰って、当時の事故について調べた。巡尉じゅんいの記録には、あの刃偶じんぐうに残響の痕跡があったと記されていた。

景燃(ジンラン): その手掛かりを調べていったら……木禺モクユウに辿り着いた。

景燃(ジンラン): これで、やっと両親を安心させられる。けど残念だな、師匠に「向き合って」伝えることはできねぇ。

漂泊者:

景燃(ジンラン): あのクソじじいに、誓いを立てさせられたんだ。自分が死んだら、墓なんか立てるなってよ。チッ……諦観ていかんしながら、よく生きてたもんだ。おかげで最後は、提灯ちょうちんもろともソノラに残っちまってな。

漂泊者: 景燃ジンラン……この飾りは、持ち主に返すべきだと思って持ってきたんだ。

景燃(ジンラン): アンタが持っといてくれ、記念にな。そいつは大した金にもならねぇし、共鳴力も一度使い果たしたら消えちまう。

景燃(ジンラン): けど、もう少し共鳴力が欲しいなら、そうだ……3ヶ月ってのはどうだ?

漂泊者: そうやって軽々と自分の命を使うな。

景燃(ジンラン): オレは未練が少ねぇ。でも最近、やっと面白れぇヤツに会ってな。

漂泊者: なら、あの有名な尋幽客じんゆうかくの「提灯下ちょうちんさげの化け猫」は今回、お宝を見つけられなかったうえに、飾りを失ったのか。

景燃(ジンラン): それはどうだろうな?オレは損する商売はしねぇ主義だぜ。

にゃーちゃん?: ふん。

景燃(ジンラン): ……これで最後だな。

漂泊者: これは……残響?

景燃(ジンラン): かつては生きていた命なんだ。

???: 生きなければ……真理は、すぐそこにある……

???: まだチャンスは残っている……俺の道は、潰えていない……

景燃(ジンラン): よう、どこに行くつもりだ――

景燃(ジンラン): 漸水舵ぜんすいだ舵主だしゅ木禺モクユウさんよ。

木禺(モクユウ): 裏切り者め……どうやって俺を見つけたんだ?

景燃(ジンラン): どっかの連環画れんかんがにあった、「兵解へいかい」の術を使ったな?

景燃(ジンラン): 外力を借りて古い肉体を捨て、混乱に乗じてここまで逃げてきたとはな。なかなかいい算段じゃねぇか。

景燃(ジンラン): けど、自分の意識を残響にしておいて、オレに見つからねぇとでも思ったのか?尋幽客じんゆうかくの仕事を忘れちまったか。

木禺(モクユウ): 俺の負けだ……そのコアには、歳主さいしゅのデータが保存されている。計り知れない価値があるぞ。

木禺(モクユウ): お前に渡してやっても構わない……尋幽客じんゆうかくにとって、いや、玄方城げんぽうじょうにとって、大きな意味を持っているはずだ……

木禺(モクユウ): 俺には時間がいる……少しでも時間があれば、歳主さいしゅの秘密をすべて暴いてみせよう……

景燃(ジンラン): 二つ、勘違いをしてるみてぇだな。一つ目、アンタにオレと交渉する権利はねぇ。二つ目、こいつは確かにいいもんだ……けどな、アンタが思ってるほど、魅力を感じねぇ。

景燃(ジンラン): それより、十数年前に夢州むしゅう城で起きた刃偶じんぐうの件は、まだ覚えてるか?

木禺(モクユウ): 刃偶じんぐう……?何だ、それは……何も覚えてないな……

景燃(ジンラン): チッ、それもそうか。お偉いさんは、一々覚えてらんねぇもんな。それともなんだ、兵解へいかいの時に、脳もおかしくなったのか?

木禺(モクユウ): ……お前は何者だ。

景燃(ジンラン): まぁ……思い出せねぇなら、それでいい。

景燃(ジンラン): 今この瞬間だけは覚えとくんだな。アンタを殺すのは、ごく普通の玄方地界げんぽうちかいの民だってことを。

木禺(モクユウ): 人間は……完璧に、なれたはずだ……

景燃(ジンラン): 人間をやめてるくせに、何が完璧だ。

景燃(ジンラン): ……止めなくていいのか?コイツを生かしておけば、何か分かるかもしれねぇぜ。

仇遠(キュウエン): 恨みとは、当人にしか定められぬ。

仇遠(キュウエン): それに、屍であれ充分に役立とう。

景燃(ジンラン): そいつは、やっぱアンタらに任せるぜ。

疑い深い職人: もう随分と経ったぞ。まだ来ないのか?まさか、前舵主だしゅの手配に誤りがあったのか……

落ち着いた職人: そう慌てないで。何かあったら、私たちで本舵ほんだに報告すればいいでしょう。

???: ……この通り、来たじゃない。

落ち着いた職人: あなたが例の之江舵しこうだの案内人なの……?

吟霖(インリン): 鎌はかけなくていいわ。二人は漸水舵ぜんすいだを待ってるはずでしょう?それとも、私を疑ってるのかしら?

疑い深い職人: じゃあ……「曲水きょくすいうたげ」?

吟霖(インリン): 「絡み合う百戯ひゃくぎ」。

落ち着いた職人: 失礼しました、ちょうど良いところに来てくれましたね。我々は前舵主木禺玄方城げんぽうじょうの天工にいた頃に残した原稿と、少し前に残した密書を持っています。

吟霖(インリン): 分かった。二人は堂主から、ご褒美をもらうことになるわ。さっそく、私と共に出発しましょうか。ただ……

吟霖(インリン): 少し、自由を制限することになるけど。

落ち着いた職人: あなたは……!?

吟霖(インリン): しっ。命が惜しいなら、知らない方がいいわ。

吟霖(インリン): これはこれは……鎖暝サメイさんが、どうして玄方地界げんぽうちかいに?

鎖暝(サメイ): 其方そなた夢州むしゅうに出向してきた、今巡尉こんじゅんいか?

鎖暝(サメイ): 勘違いしてはならぬ。わらわ琢鈞堂たくきんどうの件で来たわけではないぞ。

吟霖(インリン): 諦天鑑ていてんかん歳主さいしゅの事務を専門としてるらしいけど、あなたがここにいるということは……

鎖暝(サメイ): 其方でも知ってよいことは、そこまでじゃ。では……

吟霖(インリン): 漂泊者……機会があれば、またどこかで会いましょ。

清宵からのメッセージを見る